フォーカス関東 大ヒット! iPhone修理 新たな油外の柱ー茨城・葉梨石油店
「粗利率70%ぐらい。超コスパいいですよ!」。驚きのサブビジネスを展開しているのは、茨城県美浦村の葉梨石油店(葉梨実社長・ENEOS系)だ。同社はSSでiPhoneの修理を行っており、1ヵ月の粗利が数十万円になったこともあるという。脱炭素を見据えた〝驚異の多角化″に迫った。
相次ぐリピーター、高い粗利率
同事業を始めたのは、同SSの葉梨敬晃さん。とりわけ専門知識や手先の器用さに優れていた訳でもなく、わずか数時間の講習を受けたあと、ひたすら実績を積み重ねてきた。ドライバーなどの一般的な工具を用いて、セールスルームのテーブルで作業を行う。近隣市町村はもちろん、同SSの評判を聞きつけた、県外からの問い合わせにも対応したことがあるという。
スマホの故障で最も多いのは、落下による画面破損や洗濯時の水没だ。「意外にも壊す人は何回でも壊すので、リピーターが多い。軽度な修理なら20~30分程度で終わるし、場合によっては洗車やオイル交換、車検などの油外収益につながることもある」など、SSとの相乗効果もあった。
驚異の粗利率を上げる同事業だが、コストを削っている訳ではない。「わからないからと安い部品を使ったり、あれこれお客さんの不安を煽ったり、ぼったくりのような姿勢で臨むのは許せない。この店(SS)に来てよかったと思ってもらえれば、今度は店ではなく〝人〟にお客さんが付いてくれる」と自信を持って話す。
10万円を超える高価な機種も少なくないが、失敗に対する不安は「ない」と断言。「iPhone修理は技術的な要素が強いと思われがちだが、実はSSと同じ〝接客業〟に近いので、非常に親和性がある。仮に破損などでトラブルが起きたとしても、接客でいくらでもカバーできる。まさに人と人をつなぐフルSSと同じ」と強調する。
高齢者から気軽に相談・笑顔が生む評判の輪
デジタル化が加速する一方で、スマホを十分に使いこなせない高齢者は多い。「変な画面が出た」「ウイルスだったらどうしよう」など、相談目的の来店客もいる。それでも敬晃さんは嫌な顔せず、一人ひとりに寄り添って真摯に対応し、お客さんからの「ありがとう」を励みにする。
最もうれしい瞬間は「お客さんが安心した時の笑顔」だという。「もう駄目かもしれないと落ち込んでいたお客さんに、修理したiPhoneを渡したときの笑顔は忘れられない。お客さんの笑顔は商売をやる1番の原動力でもある」と話す。
お客さんの「助けて」に応え続けた結果、いまでは〝iPhone修理 茨城〟で検索すると、同社の情報が1番上に表示されるほどになった。当初は若者向けにツイッターやフェイスブック、LINEで広告を発信したこともあるが、新聞折込などはほとんど反響がなかったという。
「SSというブランドと、経験の積み上げと、地道な努力。この3つのどれか1つでも欠けていたら無理だった」と敬晃さん。精密機械の修理は敷居が高そうに見えるが、実際は「60代で(同事業を)始める人もいるので、年齢は全く関係ない。むしろSSでやるのは大きなアドバンテージ」と話す。
また、「SSの中で事業展開できる、というのが鍵になっている。1度に大儲けしようと思っても、絶対にうまくいく訳がない。パワーを出して収益を上げても、そのぶん失速も早い。コツコツ実績を積み上げていけば、必ずお客さんは増えていく」と強調し、地道に続けることの重要性を説く。
さらなる多角化へ弾み
新事業を提案した敬晃さんに対し、父親の実社長は〝待った〟をかけた。「リスクが高すぎるんじゃないかと思い、最初は断固として反対した。ましてSSの中でやるなんてとても無理じゃないかと思っていたが、意外なほど伸びて驚かされた」と振り返る。
1本の柱が育っても、同社の勢いは衰えない。「SSを改装し、遊休スペースを活用したビジネスにも取り組んでみたい。ただ、SSを切り離した別事業として考えるのではなく、SSのメリットを存分に活かした複合事業として収益の柱を立てたい」と野心を燃やしている。
特に重視しているのが、次世代へのバトンのつなぎ方だ。まもなく還暦を迎える実社長は、今後を見据えて「自分たちは(年齢的に)先が見えているから構わないけど、息子の代はそうもいかない。あと20年、30年と商売を続けないといけないし、SS以外の収益の柱も必要になる」と話す。脱炭素やカーボンニュートラルなど、石油業界に吹く風は冷たい。そんな中でも「常にプラス思考でいることが重要。SSと相性が良さそうなスキマ産業に目をつけて、ヒットやホームランが打てたときは格別。これだから商売はやめられない」と、多角化の道を探り続ける。
【メモ】
■葉梨石油店
茨城県美浦村の1SS。家族経営で地域のエネルギーインフラを支えつつ、セールスルーム内で新事業「ⅰPhone修理」を開始、粗利7割を達成。
SS業界として生き残る道を探るべく、同事業のパートナー加盟店も募集している。エリアごとに社数制限はあるが、研修期間は1日からでも可能。詳細は同社(電話=029ー885ー2503、Email:t.hanashi@treehope.co.jp)まで。