東北 その他 時事・話題 特集

能登半島地震から1ヵ月 実証された分散型拠点の重要性①

森会長ら全石連が被災地視察

 全石連の森洋会長、坂井信常務理事、高橋暢己業務グループ長の3人は2月3~4日にかけて、令和6年能登半島地震で特に甚大な被害を受けた石川県を視察した。3日には石川石商・協の吉原慎吾理事長ら正副理事長と意見交換。SSの被災状況について聞くとともに、今後のSSの復旧・復興に向けた課題・問題点などについて意見や要望を受けた。また、石川県庁を訪れ、馳浩知事と懇談。佐々木紀衆議院議員・自民党国土交通部会長(石川2区)も同席し、SSの燃料供給対応について意見交換した。翌4日は穴水町の舞谷商店(舞谷昭弘社長・ENEOS系)、輪島市の輪島丸善(久岡政治社長・コスモ系)、中野石油(中野俊一社長・出光系)を訪れ、被災地の過酷な避難生活や燃料供給対応での切実な声を直接聞いた。

県庁を訪問(前列㊧から森会長、馳知事、佐々木議員、後列㊨中市副理事長)
県庁を訪問(前列㊧から森会長、馳知事、佐々木議員、後列㊨中市副理事長)

<現地の切実な声直に 知事、石商訪ね課題共有>

 3日、石川石商・協を訪れた森会長ら全石連一行は、吉原理事長をはじめ、吉岡英一郎・野村幸宏・中市隆幸・本村幸宏各副理事長および今川弘史専務理事から、被災SSや燃料供給対応の状況、被災SSの復旧に向けた課題などについて意見交換。正副理事長からは、運営継続に向けた資金繰りの問題のほか、被災自治体の庁舎や避難所等への政府の燃料供給要請に係る燃料代金の早期支払いや、元売に対する仕入れ代金の支払猶予・遅延の要望、先月26日に政府が閣議決定した「被災者の生活と生業(なりわい)支援のためのパッケージ」のうち、9・5億円が措置されたSS早期復旧支援事業に対する質問や要望などが寄せられた。
 一方で、補助金を活用してSSを再建しても、折からの少子高齢化の進展に加え、震災を契機とした人口流出などによる需要減少の加速が懸念されるほか、人手不足などもあり、SSの生業を復活させることの難しさを強調した。
 その後、森会長ら全石連一行は、中市副理事長とともに、石川県庁を訪れ、馳知事と懇談。森会長、中市副理事長から、SSの被災状況や精販一体となった被災地等への燃料供給に向けた取り組み状況について報告。 
 馳知事からは、平時からの石油製品の安定供給に加え、今回の能登半島地震における病院や緊急車両等への緊急供給要請に対する被災SSの多大な貢献について、謝意が述べられた。
 森会長ら全石連一行は翌4日には、穴水町と輪島市の被災SSを訪問。舞谷商店の舞谷夫妻からは、SSなどの被災状況などについて話を聞いた。この中で、掛け売り法人・顧客の多くが被災し、その行方がわからなかったり、法人・顧客も被災して日々の生活も苦しい状況の中で、「請求書を送ることができなかったり、被災された方々に請求書を送ることにためらいを感じている」と明かし、苦しい胸の内を吐露した。一方で、地域の災害拠点として「災害時における緊急車両などに対する燃料供給を絶やしてはならない」と、エネルギー供給の〝最後の砦〟としての強い使命感を示した。
 続いて、輪島市の輪島丸善を訪問。久岡社長は輪島商工会議所会頭や社会福祉協議会長を務めるなど、地域の発展に向け、地元に密着したSS経営を行っている。このため、被災地の復旧・復興に欠かせない石油製品の供給を継続するため、SS従業員の住宅が被災し避難所生活を続けながらも、避難所からSSに通い、輪島市等からの燃料配送要請に応えるなど、日々懸命に燃料供給に従事していることを訴えた。また、全石連が国の補助事業として実施している『災害時対応実地訓練』で学んだ知見が役立ったとも語った。
 続いて、中野石油を訪問。激震によって、地盤隆起や防火塀が倒壊している中、ハイオクガソリンと灯油は給油業務を継続。さらに軽油や灯油の配送業務も行っていることを報告した。一方で、17年前の2007年3月に発生した能登半島地震で地盤が隆起した箇所が、今回の震災でさらに地盤が隆起するなど、SS復旧の困難さを強く訴えた。
 森会長は、「今回の震災は明らかにSSの傷み方が違う。多くのSSでフィールドが隆起したり、地下タンクが盛り上がってきたりしており、1SSあたりの被害額が相当大きくなる可能性がある。これまでの東日本大震災や熊本地震よりも、SSの被害は大きいように思われる」と、今後の被災地の復旧・復興に向けた被災SSの甚大な被害に危機感を訴えるとともに、被災SSの復旧支援のあり方についても、今後の復旧状況を注視しながら、適切に対応していくことが必要との認識を示した。